原子力政策 2012 11 10
2012年11月9日の時事通信社には、このようなニュースがありました。
「2040年の原発依存度、50%超に チェコ」
【ベルリン時事】チェコのネチャス首相は9日までに、
同国の総発電量に占める原発の割合を現在の30%から、
2040年をめどに50%超に引き上げる計画を打ち出した。
同首相は記者団に対し、石炭の使用量を減らし、
温室効果ガスの排出量削減につなげるのが狙いと説明。
稼働中の6基の原子炉に加え、3基を新設する方針を示した。
(引用、以上)
自然エネルギーが当てにならない以上、
原子力発電を推進するのは、自明の理です。
風力発電は、風が吹けば発電できますが、
風がない時は、発電できません。
太陽光発電は、晴れれば発電できますが、
曇りや雨ならば、発電は期待できません。
そういう気象条件の時は、
電力の使用を控えるのか。
このような問題が発生する原因は、
「電力は、大量に貯めることができない」ということです。
現在の技術では、せいぜい電気自動車の電力を貯める程度です。
もちろん、日本が農業国家ならば、
このようなライフスタイル、
つまり、気象条件が悪く発電できない時は、
電力の使用を控えるという生活ができますが、
工業国家では、とうてい不可能でしょう。
このような問題を解決するには、
超電導の蓄電システムが必要となるでしょうが、
現代の技術では、夢の技術です。
電力のABC 2012 10 28
A 電力は、大量に貯めておくことができない。
B 電力は、需要と供給を常に一致させる必要がある。
C 電力は、遠くへ送るほど失われる。
まず、Aについては、ご存知の方が多いと思います。
スマートフォンやノートパソコンを持ち歩いていると、
「電力は、大量に貯めておくことができない」ということは、
よくわかっているでしょう。
最近では、電気自動車がありますが、
「カタログどおりに走行距離が伸びなかった」という不満も出ているでしょう。
さて、将来の技術というか、夢の技術があります。
それは、超伝導を使って、蓄電するという方法です。
超伝導状態になれば、電気抵抗がゼロですから、
いったん大電流を流すと、永久に電流は流れ続けます。
そこで、発電された電力を電力貯蔵装置に貯蔵しておくという方法です。
超伝導コイルは、電気抵抗なしに大電流を流すことができますので、
さしあたって使い道のない電力をコイルに流しておき、
必要になったら、そこから戻して使うという方法です。
このような方法ならば、電力を「貯金」したことになります。
今のところ、夢の技術です。
次は、Bでしょうか。
これは、知らない人が多いと思います。
「電力は、需要と供給を常に一致させる必要がある」
電力の需要は、一日の中で、刻々と変化しますが、
電力の需要が増えたら、電力の供給を増やし、
電力の需要が減ったら、電力の供給を減らす必要があります。
多くの人は、「ちょっと待ってほしい。
電力が足りなくなると困るのは、わかるが、
なぜ、電力が多すぎると問題があるのか。
作りすぎは、なぜ問題なのか」と思ったでしょう。
これは、周波数の問題を考える必要があります。
科学雑誌「ニュートン 1月号」(2012年)から引用しましょう。
電力が余ると、交流の周波数が狂ってしまうからです。
電力が余った状態では、
その大元である発電機の回転数を上昇させようとする作用が働き、
結果的として、周波数が上がってしまうのです。
逆に、電力不足となると、周波数は、下がります。
(周波数は、関東では50ヘルツ、関西では60ヘルツです)
周波数が、本来の値から、ずれると、
周波数に基づいて決まるモーターの回転数が変動して、
工場での工業製品の製造に影響が出る場合があると言います。
その許容範囲は、0.2から0.3ヘルツ程度までとされています。
また、周波数のずれが数%に達すると、
発電機が故障する可能性が出てくると言います。
このため電力の需要と供給は、
ほぼ、ぴったりと一致していなければならないのです。
電力会社では、周波数の変化を見て、
需要の変化を推測し、それに合わせて発電量を調整することで、
この問題をクリアしています。
(以上、引用)
最後のCですが、これも知らない人が多いと思います。
「電力は、遠くへ送るほど失われる」
これを簡単に説明すると、
電気は、電線の中を進むとき、熱となって失われていくのです。
冬にスマートフォンを手のひらに乗せると、暖かいと感じませんか。
昔は、パソコンのCPU(大規模集積回路)で、卵焼きができると言われました。
CPUが発する高熱で、卵が焼けるのです。
ただし、そのような状態では、CPUは故障してしまいます。
そういうわけで、CPUファンでCPUを空冷しているのです。
話が長くなりましたが、
理想を言えば、電力は、「地産地消」が望ましいのです。
つまり、地元で取れた電力を地元で消費することが望ましいのです。
そうなると、都市部は、困ってしまうのではないか。
そこで、ひとつの解決方法があるのです。
私が子供の頃、
50万ボルトという、途方もない高電圧の送電線を造るという計画に、
地元では、反対運動が起きたことがありました。
これほどの高電圧でも、
「健康被害はない。安全だ」と説明があったにもかかわらず、
反対運動がありました。
電力を遠くまで送るには、「超高電圧」にするしかないのです。
高校の授業で習ったと思いますが、
電圧が高ければ高いほど、送電損失が少なくなります。
最近は、50万ボルトどころか、
ちょっと怖い感じがしますが、100万ボルトによる送電も計画されています。
100万ボルトの送電線が出現するかもしれません。